2015年12月22日火曜日

フラット化する世界

 フラット化する世界
トーマス・フリードマンによると、グローバリューションが広まって世界がフラットになった要因には、次の10の現象があずかっている。
 ①【ベルリンの壁の崩壊とウィンドウズ】‥‥‥1989年11月9日にベルリンの壁は崩壊し、ソ連圏が解体した。それが引き起こした「自由化」の波がいかに世界の印象を変えたかはいまさら説明するまでもない。
 そこに1990年のウィンドウズ3・0が重なった。アップル・IBM・ウィンドウズ革命がおこったのだ。マイクロソフトのクレイグ・マンディCTOは胸を張って言った。「これで文字・音楽・数字データ・地図・写真・音声・映像がすべてデジタル表示できるようになった。そのうち誰もがたいした費用をかけずにデジタル・コンテンツを作り出すことになるだろう」。その通りになった。
 ②【インターネットの普及と接続の自由】‥‥‥90年代の半ばになると、ティム・バーナーズ・リーが開発したWWWが登場し、ジム・クラークとマーク・アンドリーセンのモザイク・ウェブブラウザーが市販され、ほどなくしてHTML(ハイパーテキストの記述言語)が使われるようになった。1995年8月9日にネットスケープが公開、その1週間後にウィンドウズ95がインターネット・エクスプローラを装着して売り出したとき、世界は本気でフラット化に向かったのだ。11・9と8・9。これがフラット記念日だ。
 ③【ワークフロー・ソフトウェアと共同作業の開始】‥‥‥こうしてソフトウェア産業が躍り出てきた。まず単純メール転送プロトコルSMTPが種類の違うコンピュータをつなげると、誰でも電子メールのやりとりができるようになった。線路はTCP/IP(送信制御プロトコル/インターネット・プロトコル)が、言語はHTMLが引き受けた。そこへXMLというデータ記述言語とそれに付随するSOAPという通信プロトコルが加わって、どんなパソコンもたいていの情報を共同使用できるようになった。
 ここに「標準化」(スタンダード)という共有を求める価値観が生まれ、さまざまな場面のスタンダード・ソフトが連打されていったのだ。
 ④【アップローディングとコミュニティ】‥‥‥さぁ、そうなると、おたくのコミュニティが自在に動きはじめて、アップローディングのしくみを極端に便利にしていった。コミュニティは「リナックス」「ブログ」「ウィキペディア」「ポッドキャスティング」「ユーチューブ」を次々に世に送り出した。ティム・オライリーは「これからのユーザーは消費するだけでなく創造する」と断言した。(たしかにそんな感じもするが、それってバロックやダダや寛永文化や南米文学の“創造”にはとうてい及んでいないよね)。
 ⑤【アウトソーシングによる技術転移】‥‥‥インドにはIIT(インド工科大学)が7校ある。この出身者たちは、最初はGEの部品のアウトソーシングを担当し、ついでテキサス・インスツルメンタルのマイクロチップを担当し、次にアップル社のさまざまなソフトにかかわるようになり、ついにはアメリカのIT技術の多くのアウトソーシング・センターの中核者となっていった。
 こうしてフラット化された世界の技術はアウトソーシングの先に新たな技術と市場をつくっていく。これは、他のどの国のどの技術集団にもあてはまる。アウトソーシングがフラット化を促進するのだ。(とはいえ、それで潰れていった制作会社も数限りない)。
 ⑥【オフショアリングがおこった】‥‥‥オフショアリングとは何か。最近の「中国の資本市場という現象」そのものがオフショア・フラット化の代表例だ。グローバリューションは、それがケータイであれ電気自動車工場であれ、どこかにオフショア(海外上陸)しさえすれば、どこかへのオンショア(国内逆上陸)をおこす。たしかにその相互浸透性こそ2000年からの世界変化だった。
 ⑦【サプライチェーンが一変する】‥‥‥ウォルマートは、フラットな世界ではサプライチェーンが競争力と利益の根幹になっていくことを劇的に示した企業となった。ウォルマートは製品を一つも作らずに、サプライチェーンだけをビジネスにした。在庫を情報レポジトリーに変え、流通を情報ネットワークにした。(でも、知識というサプライチェーンをどのように高性能にするかということはちっとも進んでいない)。
 ⑧【インソーシングで世界が同期化する】‥‥‥1996年、運送会社のUPSが「シンクロナイズド・コマーシャル・ソリューションズ」という事業に乗り出したとき、渋滞しがちで合理性を欠いていた各社の流通が、UPSのインソーシングによって問題を解消できることになった。社内で管理していたロジティックスが社外のロジティック・システムに委ねられるようになったのである。なるほど、これまた世界のフラット化がおこっていなければできないことだった。(とはいえウォルマートで世界は生活したほうがいいなんてことはない。ユニクロだけでの生活なんておもしろくないように)。
 ⑨【グーグルによるインフォーミング】‥‥‥グーグルが世界の知識を平等化した。(たしかに、そうだ)。そこにはグーゴル(10の100乗)な数の人間がかかわれるようになった。グーグルは、アップローディング、アウトソーシング、インソーシング、サプライチェーン、オフショアリングのすべての個人化を可能にした。これによって、「自分で自分に情報を教える」というインフォーミングが可能になった。
 同じことがアマゾン、ヤフー、TiVoにおこり、世界はますますフラット化することになった。(これまたたしかにそうだが、情報や知はそもそもフラットなのではなく、むしろ複雑さに触知することで解発されるんだけどね)。
 ⑩【情報のステロイドホルモン化】‥‥‥「デジタル」と「ワイヤレス」と「モバイル」と「ヴァーチャル」と「パーソナル」が掛け算されると、強力な情報のステロイドホルモン化がおこる。ナップスターやiPodがその先兵の役目をはたした

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