2016年1月19日火曜日

農業のデジタル化で新事業展開を実現した農薬メーカーの成功事例

茂木氏の講演に続き、これからの素材・化学メーカーが備えるべき点について、SAPジャパンの宮田がシステム面から解説しました。その中で紹介した事例が、アメリカの農薬メーカーであるモンサント社の農業のデジタル化を通じた新規事業です。モンサント社は、2013年にGoogle出身者が設立した気象情報のビッグデータ分析会社を買収しました。そして、全米250万カ所の気象測定データと1,500億カ所の土壌観察のデータ、種子・農薬の品種改良データなどをもとにした情報を農家や農場経営者に提供しています。IoT化されたトラクターからは、どの農場のどのエリアを耕しているといった情報が把握できるため、例えば、「3時間後にここは雨が降る可能性が高いから、作業は後回しにしましょう」といったレコメンドを送信することができます。その結果、農家は無駄に肥料を蒔く必要がなくなりました。

宮田はモンサント社の事例をもとに「IoTは顧客観察のためのプラットフォームです。顧客を知り、さらには顧客の利用状況と変化を知り、個々の顧客の変化に合わせた商品サービスを提供することが可能になります。農業の場合なら、どの農家がどんな土壌を持ち、どの農薬や種子を使い、結果的にどうなったといったループを回していくうちに、農家以上に農家を知ることができる。それが結果的に個々の農家にカスタマイズされた情報を提供するマス・カスタマイゼーションにつながります」と説明します。
これまでバリューチェーンの上流にいた農薬メーカーのモンサント社は、企業買収によってIoTやビッグデータを活用したデジタルビジネスに参入し、消費者に近いポジションを獲得することに成功しました。アメリカの農機具メーカーのジョンディア社も、モンサント社と同様の農業のコンサルティングビジネスに参入しています。このように、農薬メーカーと農業機器メーカーという異業種が、デジタル化された農業という新しい市場で競合する時代が訪れているのです。
最後に宮田は「アナログな領域こそ、IoTやデジタル化で破壊的イノベーションが起こりやすく、新しいマーケットが形成されていきます。異業種にとっては最大のビジネスチャンスであり、それこそがインダストリー4.0の本質ではないでしょうか。SAPでは、デジタルのコアとなるためにシンプル化のコンセプトで開発したSAP S/4HANAによって、今後ますます破壊的イノベーションを支援してまいります」と語りました。

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