「TPP の影響に関する各種試算の再検討」全国農協中央会委託調査研究 東京大学教授 鈴木宣弘
TPP 参加によ
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る我が国の国内生産の減少量は、
JA試算コメ 7 割弱、小麦 5 割弱、砂糖・牛肉 2 割弱、乳製品 3%
程度で
、農水省の、コメ 90%、小麦 99%、砂糖 100%、牛肉 75%、乳製品 56%
という生産減
少量とは極端な格差がある。国産品と輸入品との代替の程度を表す係数(アーミントン係数)
をGTAPモデルの「既存値」から少しずつ増加させて(代替性を強めて)試算し直してみたが、
コメ以外の品目については、農水省試算との差は容易には縮まらないことも判明した。
つまり、GTAP モデルによる試算は、モデル構造上の制約によって、国内生産への影響が
過小になる宿命を背負っているので、その結果を用いて国内農業への打撃を議論すること
は妥当ではないということである。
発表されている減少率より低い
最近の経済学では、自由貿易などの影響評価は市場取引の金額に表れる狭義の経済的影
響だけではなく、外部効果も含めた総合評価を行うべきという考え方が重視されるように
なっている。にもかかわらず、WTO や FTA の貿易ルールは、いまだに外部効果を考慮しな
いオールド・ファッションな評価にもとづいて正当性が主張されていることは問題である。
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